犬に鹿肉や馬肉など生肉を食べさせるメリットとデメリット

鹿肉や馬肉は人間にとってもヘルシーで高級な食材というイメージですが、愛犬にとっても鹿肉や馬肉は、脂肪分が少なくヘルシーな上に、アレルギー発症リスクが少ない優れた食材として注目されています。

そんな鹿肉や馬肉を犬に与えるときには、生肉の状態がいいとされています。ただし、それらのお肉の生肉を食べさせるのは、メリットだけでなくデメリットもあります。ここではどんなメリットとデメリットがあるのか、詳しくご紹介します。

鹿肉や馬肉を与える事のメリット

鹿肉や馬肉を犬に与えるメリットは、その優れた栄養価にあります。鹿肉や馬肉は、牛や豚に比べ脂肪分が少ないので、肥満の予防や脂肪分の接取過多による涙やけ、耳内トラブルの発症予防に効果があると言われています。

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それぞれの肉の栄養成分を比較してみましょう。

牛肉(交雑牛肉・リブロース・赤肉・生)

カロリータンパク質脂質カルシウム鉄分
376kcal16.7g32.3g3mg1.7mg

豚肉(大型種肉・ロース・赤肉・生)

カロリータンパク質脂質カルシウム鉄分
150kcal22.7g5.6g5mg0.7mg

鹿肉(あかしか・赤肉・生)

カロリータンパク質脂質カルシウム鉄分
110kcal22.3g1.5g4mg3.1mg

馬肉(赤肉・生)

カロリータンパク質脂質カルシウム鉄分
110kcal20.1g2.5g11mg4.3mg

脂質の少なさだけでなく、馬肉のカルシウムの含有量は牛や豚に比べ2~4倍も多く含まれているのがわかります。鉄分も牛、豚、鶏よりもかなり多く含まれていて、ヘルシーでありながら非常に高栄養な食材だということを理解してもらえたかと思います。

ダイエットをしなければならないけれども、肉を食べさせてあげたいという場合には、牛や豚、鶏肉よりもヘルシーな鹿肉や馬肉に切り替える事で、同量の食事量でありながら、効率的にカロリーをカットできます。

また、シニアになり脂肪分を控えヘルシーな食事をさせたい、消化吸収に負担がかからない食材を選びたいという場合にも鹿肉や馬肉はおすすめです。

食材の栄養素は加熱する事で消滅してしまうものですが、馬肉の場合、馬自身の体温が牛や豚に比べ高い事から、細菌や寄生虫のリスクが低く、加熱をせずに安全に与える事が出来るとされています。つまり、食材そのものの栄養素をしっかりと吸収できるのです。

また、牛や豚、鶏に比べて生産量が格段に少ない事から、品質に関してもさほど劣悪なものが出回る事がないとされているので、犬用という分類で販売されている場合でも安全性の高い製品が多いと言われています。

最近では、犬用馬肉が多数市場で販売されていますが、大抵の場合は人間の可食部位を加工した際の切れ端であったり、残り部分が製品化されていたりする場合が多いので、品質に関しても安全性が高いといえるでしょう。

ただし、野生の鹿肉の場合は「E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌または寄生虫による食中毒のリスクがある」と厚生労働省が指摘しています。人間と犬では内臓の丈夫さが違いますが、野生の鹿肉は生肉では食べさせないようにしましょう。

ただ、鹿肉や馬肉で作られたドッグフードは生産量が少ないことや、原材料の安定供給が難しいなどの理由で、販売価格が相当な高額になってしまいます。そのため、鹿肉や馬肉で作られたドッグフードを使い続けるのが難しいのが現状です。

馬肉は余計な脂肪分が少なく、生食が可能で、消化吸収にも優れていることから、継続して与えることで、徐々に毛並みがよくなった、涙やけが改善した、便の不調が改善したなどの健康面での改善が見られることが多いようです。鹿肉でも同じような改善が見られます。

また、競技など本格的なスポーツをしている犬の場合、体形の維持を効率的な消化吸収という面からも鹿肉や馬肉が適していると言われています。

馬肉を与える事でのデメリット

馬肉を与えるうえでのデメリットも若干ですがあるという事を覚えておきましょう。

まずは鹿肉や馬肉を主食として与える場合、それなりの費用がかかるという点です。たとえ、人間の可食部位を取り除いた後の残り部分とはいえ、生産量が少ない食材ですから、販売価格もそれなりに高騰してしまうからです。

毎食馬肉だけで調達するとなると、月の食費は数万円単位になってしまいます。もしかすると飼い主さんよりも食費がかかってしまうかもしれません。

また、生肉を食べる事で共通してみられる症状として、下痢や軟便という症状が見られる場合もあります。与え始めの一時期で治まる場合もあれば、与えるたびに軟便になってしまう体質の場合もあります。

薬で治療をする必要はありませんが、あくまでも体質の一種と考え、給餌量を減らすなど調整してあげましょう。万が一、あまりに重度な症状が続くようであれば、寄生虫などの可能性も考え、動物病院での検便検査を受けましょう。

鹿肉や馬肉は非常にヘルシーで栄養価の高い食材ではありますが、やはり過剰摂取は危険でもあります。馬肉に限らず、特定のタンパク源のみに偏った過剰摂取は、アレルギーを引き起してしまうリスクが高くなります。

鹿肉や馬肉だから安全なのではなく、適度な量で摂取することで安全だという事を覚えておきましょう。どんな食材でも、そればかり摂り続けているとアレルゲンになってしまう可能性がありますので、「馬肉だから安全!」と決めつけないようにしましょう。

また、肉類の過剰摂取は、尿路結石という病気の発生にもつながります。接取したタンパク質がカルシウムを結合し、体内にあるシュウ酸が尿の中に吸収されてしまい結果的に結石となってしまうのです。

馬肉は特にカルシウムの含有量が高い事から、この結石のリスクが高いとも言われています。しかし、どの程度の量を与える事で過剰摂取になるのかという明確な基準がないことから、どこまでが許容範囲内なのか判断が難しいという問題もあります。

とはいえ愛犬の健康状態、体重の変化、便や尿の状態をこまめに観察し、異変があればすぐに動物病院へ相談をするように心掛けておくことで、大きなトラブルになるのを回避できます。体に問題が発生したときには、必ずなんらかの症状が発生しますので、見逃さないようにしましょう。

デメリットもありますが、愛犬の健康を考えるうえで、鹿肉や馬肉は非常に優れた食材です。体質や体調に合わせて、適度に活用していきましょう。

犬用生肉フードの落とし穴

ペット専門に生肉を配送する業者も登場しており、これも一種のナチュラルブームの延長線上にある現象でしょう。生肉食の製品は、私の知るかぎり40年ぐらい前からありました。一般には出回らず、ブリーダーや一部多頭数飼育の愛好家の間で使われてきました。

最近では、その生肉食が、一般の愛好家の間にも広がりを見せています。

しかし、生肉食は大きな危険を孕んでいるということも、きちんと頭に入れておきましょう。生肉の多くは家畜肉ですが、いくら家畜肉が法的に管理・処理されているからといっても、まったく安全だとは断言できないからです。

特に輸入家畜肉の場合、各国が同一基準で管理しているわけではありません。たった一頭の狂牛病のために、日本はアメリカ産牛肉を輸入規制の対象にしましたが、日米間でその是非について議論が沸騰しているのを見ると、国によって考え方が異なることを痛感させられます。

日本でも家畜の安全性に関する問題点が指摘されています。ジャーナリストの甲斐隆一氏は、「畜産現場ではなぜ、人の二倍の抗生物質が使用されてきたのか?」と題したショッキングなレポートのなかで、次のように指摘しています。

平成14年度の調査では、300体あまりの家畜で、サルモネラなど4種類の菌について調査した結果、家畜のおよそ60%が何らかの耐性菌を持っていることがわかった。

最も多く検出された大腸菌では、21種類の抗生物質に対する耐性菌が発見され、また腸球菌という菌では、抗生物質の一種、バンコマイシンに対して〃高度の〃耐性を持っている菌も見つかっている。人の医療現場で最も警戒されている菌だ。

日本の畜産現場では、生産性を上げるため、これまで大量の抗生物質が家畜に与えられてきました。これに対して農林水産省は、昨年、人間の治療に使う抗生物質は、一部ですが家畜に使わないことを決めたようです。

しかし、生肉と耐性菌の関係については、常に念頭に置いておいたほうがいいでしょう。

そのことを理解していれば、犬や猫の体調が芳しくないとき、あるいは病中、病後、妊娠中などは、生肉を与えないなどの対応ができます。「生肉は安全」だと思いこんでいると、与えるべきでないときにまで食べさせてしまいますよね。

耐性菌に感染した場合は抗生物質が効かないため、治療の施しょうがなく、ペットを死に至らしめる可能性もあるのです。耐性菌に汚染された生肉を犬が食べ、その犬に舐められたことで人間の体内に菌が侵入して病気になるというリスクもあります。

生肉を犬用のフードとして愛用する方は、「犬の祖先は肉食だったから」という言葉に踊らされないようにしてください。生肉を与えることにもメリットとデメリットがありますので、それをきちんと把握した上で活用しましょう。

老犬には生肉が良いという意見もありますので、それらのメリットを活かさないのももったいないことです。状況に応じて柔軟に取捨選択を行うようにしてください。

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